プロジェクトストーリーProject Story

世界屈指の規模を誇る最終処分場の新設・運転に挑む

Project Member

統括責任者
水環境リサイクル事業部
事業部長
尺田 聖朝

営業担当
水処理営業部 大阪営業課
中平 毅

設計・工事担当
水処理プラント部 設計課
山本 浩徳

運転管理担当
九州支店 維持管理課 事業所長
伊藤 圭

鹿児島県には産業廃棄物の最終処分場がなかったため、県内で出た産業廃棄物でも、県外の処分場に頼る状態が長く続いていた。同県では、自立的な循環型社会の形成や地域産業の振興を図るべく、公共関与による産業廃棄物管理型最終処分上の建設を検討。粉塵や臭気の飛散・拡散を防ぐため、埋立地は屋根で覆うこととし、通常、浄化したうえで河川などに放流される浸出水は、施設内で再利用するなど、高度な安全性を追求することとなった。

クボタ環境サービス株式会社の技術力を結集して
困難な課題にチャレンジすることを決意

2010年、埋立最終処分場の新規建設が鹿児島県から告示された。即座に情報をキャッチした中平は、詳細を確認したうえで話を社内に持ち帰った。
クボタ環境サービス株式会社は既設プラントの維持管理や補修工事を主たる事業としていたが、当時は、新設プラントの営業を再開して間もなかったタイミングであった。鹿児島県の案件告示は、社内の体制が変わる過渡期だったわけだ。
「この案件では、国内では前例が少ないクローズド型(=屋根付き)施設にすることや、浸出水を脱塩処理して再利用することなど、特殊な要件が課せられていました。社内の体制が充分に整っていないうえに、難易度の高い要件が提示されていたため、獲得に向けて動くべきかどうか、私たちは難しい判断を迫られたのです」(中平)

協議の結果、経営陣はGOサインを出す。後に本案件の統括責任者となった尺田は、決断の背景について次のようにいう。
「当時、クローズド型の施設は少数でしたが、より安全性の高い処分場のあり方として、今後新設を検討する事業者の注目度が高まるはずだと考えました。また、この案件の規模は、クローズド型としては世界でも最大級。そしてこの案件が獲得できれば、クボタ環境サービス株式会社が取り組むプラント新設の第一号になるわけです。ここで確かな結果を出すことができれば、我々の技術力や信頼性の高さを示すシンボリックな事例になるため、ハードルは高くても、チャレンジする意義や価値は大きいと判断しました」

GOサインを受けた営業メンバーは、パートナー探しに奔走する。施設をつくるうえでは、土木工事や建設工事などを担う建設会社との連携が不可欠だからだ。
「鹿児島県としては、委託業者の選定にあたり、見積額だけでなく技術レベルや提案内容も重視する総合評価方式をとることになっていました。本気で案件獲得を目指すには、処分場建設の実績やノウハウが豊富なパートナーと組む必要があったのです。これは建設会社も同じで、プラントづくりや運転・維持管理に優れたノウハウを有した会社を探しています。お互いに相思相愛の形で手を組むことになったのが、大成建設JVさんでした。地元建設会社の植村組さん、田島組さんのグループにクボタ環境サービス株式会社も参画して共同企業体を組成しました」
数々の苦難を経て入札した結果、大成建設JVは見事落札。後から判明したが、実は見積金額自体は競合より1億円ほど高かったのだという。
「価格面以上に、技術的な部分や完成後のフォロー体制などを高く評価していただけた結果だったと思います。当社も一構成員として受注への貢献ができたと自負しています」(中平)

前例のない難題の実現に向け
いよいよプロジェクトが始動

プロジェクトの始動が決まると、当時、クボタのプラント設計セクションに出向していた山本が設計主査に任命され、実施設計を担当することになった。
「プラント新設事業の移管を受けたばかりで設計の体制が整っていませんでしたし、維持管理や補修でも、クローズド型に関与した前例はありませんでした。文字通り手探りで進めることになるため、大変な難題を背負うことになったと思いました(笑)」(山本)

山本が特に頭を痛めたのは「水収支」だという。
「通常のオープン型最終処分場では、雨ざらしの産業廃棄物から染み出た浸出水を浄化して河川や海に放流します。しかし、今回のクローズド型では、浄化した浸出水を再利用して、人工的に産業廃棄物に散水するわけです。循環プロセスで、どれくらいの水が蒸発するのか、それをどう補うのかも我々が考える必要がありました。脱塩・蒸発乾燥装置についてはクボタ本体では過去に2事例だけ納入実績があったので古い計算書を引っ張り出し、参考にしていました。それでも想像で補う部分も多かったので、完成してからも伊藤所長には迷惑をかけてしまいましたが」(山本)

設計が完了すると、いよいよ工事が始まる。山本は施工管理の役割も担った。
「共同事業体を構成する4社のうち、プラントメーカーはクボタ環境サービス株式会社だけで、他の3社は建設会社です。このため、全体の計画は通常の建物をつくる手順で考えられてしまいますが、場合によってはプラント建設ならではの段取りが必要になります。例えば、蒸発乾燥装置などの大型な設備の場合、建物ができあがってからでは設置できないため、途中で建設作業を中断してもらう必要があるのです。このあたりは現場の工事部隊に調整してもらっていましたが、コストや工期に影響するので、簡単ではなかったはずです。それでも、クボタ環境サービス株式会社としてのクオリティを守るために頑張っていただきました」(山本)

社内でも少ない経験者を投入して安定稼働を実現
今では、全国各地から視察を申し込まれる先進施設に

無事に竣工を迎えても、運転や維持管理も担うクボタ環境サービス株式会社にとって、それは途中経過でしかない。特に難題だったのが、脱塩装置の扱いだ。
浸出水を浄化する過程では、塩分が発生する。通常の埋立処分場では、他の汚染物質が除去されていれば、塩分を含んだ処理水は河川などに放流することが許可されている。しかし、エコパークかごしまでは、処理水の塩分を除去したうえで、埋立地の散水に再利用することになっている。このために導入されているのが脱塩装置だ。世の中には、脱塩装置を導入した水処理プラント自体が少なく、クボタ環境サービス株式会社でも、扱ったことがある社員はごく少数だった。事業所長として運転管理を担当する伊藤は、貴重な経験を有する1人だ。
「脱塩装置には複数の透析膜が入っていて、電気を通すことで塩分を抽出します。しかし、膜の間に電気を通さない物体がつまると、過度に発熱して損傷してしまうのです。このため、定期的に専門会社に膜を洗浄してもらうことになっていますが、着任当初は想定より早いペースで洗浄が必要になってしまい、慌てましたね(笑)。スタッフ総出で洗浄して対処していました。エコパークかごしまならではの稼働パターンをつかみ、安定的に運転できる体制を整えるまで、2年ほどかかりました」(伊藤)
「前例がないので推測で補いながら設計した部分も多くありました。このため、脱塩装置に限らず、稼働させてから新たな事実が発覚することも多く、その都度、伊藤所長と解決法を模索していました。試行錯誤の末に安定稼働を実現させていただき、本当に感謝していますよ」(山本)

さまざまな社員の総力を結集して、エコパークかごしまは安定稼働を継続している。今では、同様の施設建造を検討する自治体担当者が全国各地から視察に訪れるまでになった。尺田は、このプロジェクトを次のように総括する。
「当初企図したとおり、この実績がクボタ環境サービス株式会社の技術力や信頼性の高さの裏付けとなり、さまざまな案件の獲得につなげられています。また、先駆的な試みに踏み出したことで、日々、新たなノウハウを蓄積できています。今後も、自社の成長と社会貢献を両立させながら、実績を積み上げていきたいですね」

Customer's Voice

エコパークかごしま
公益財団法人鹿児島県環境整備公社

理事長 山下隆志様

※2021年3月時点

困難なミッションを実現される技術力に感謝

当公社が運営する「エコパークかごしま」は、循環型社会の形成や地域産業の振興を図るために不可欠な産業廃棄物管理型最終処分場として、平成27年1月にオープンしました。
建設に当たっては、平成3年以来、県内には1カ所も管理型最終処分場がなかったこともあって、安全性の高い、全国でもモデルとなるような施設とすることを目指しておりましたが、クボタ環境サービス株式会社さんを主要メンバーとする共同事業体から環境保全や早期安定化に優れた最先端の技術提案をしていただきました。
その特徴としては、国内最大規模の覆蓋施設を備え、浸出水処理水を河川に放流せず処分場内の散水に循環利用するクローズドシステムを採用するなど環境に最大限配慮している点にあります。
また、整備後の維持管理についてもクボタ環境サービス株式会社さんにお願いしていますが、さまざまな廃棄物が搬入される中で水処理施設の安定稼働に尽力いただいており、当処分場の信頼性の向上に貢献していただいております。
廃棄物の埋立終了後の安定化までの管理期間を含めると、まだまだ長い期間の維持管理が必要です。今後とも当公社を含めた「チームエコパーク」の一員として、その豊富な経験と優れた技術力を生かし、水処理施設の維持管理に努めていただきたいと思います。

エコパークかごしま